白鳥たちが鳴いてる(1) ― 2013/01/08 16:49
来た!
我が家の上空を飛んでいる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2011年3月原発事故避難指示で無人の町と化した故郷。
近くの紅葉川に飛来していた白鳥たちの鳴声が恋しい。
クゥークゥークゥークゥークゥークゥー
クゥークゥークゥークゥークゥークゥー
時折実家に帰省してその姿を写真に収めていた。
そして故郷に移住してからも。
その紅葉川の河口に集っていた白鳥たちが今どうなっているのか
確かめることはできない。
残念だ。
せめてもと記録されている景色を見てみることにした。
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2001年11月26日
朝 北国から訪れている冬の使者が飛んでいる。
水を捕らえてオールを漕ぐような翼の音が聞こえる。
内陸の大池から飛んでくる。
向こうに見える東電福島第二原発の排気塔が近い。
里山を越えてやって来る。
海岸の松林の上を飛ぶ。
家族ごとにやって来る。ビー・ビービー翼を広げて制止をかける。
紅葉川は太平洋に流れている。右手の防波堤は東電福島第二原発。
河口に近い赤い屋根の阿弥陀如来様のお堂は津波で失われた。
お堂は原発建設に伴って山の上からここに移設されたと父母が語る。
日中はここで憩う。
左手奥の断崖を北上すると過酷事故を起こした福島第二原発がある。距離10キロ。
2001年12月30日
午後遅く。里川の紅葉川。
白鳥が鳴いている。人の姿を見ると寄って来る。
上流に向かってステイする。子供と一緒に。
夕暮れ。
静かな海上に月が昇り始めた。
今晩はここで休むことを決めた白鳥たちは眠りに付く。
2001年12月31日
大晦日の日。常磐線、仙台方面。
東京方面。
この線路の際まで津波が押し寄せた。
白鳥の声が聞こえて来た。
遠くに見えるのは阿武隈高地。
海水が寄せてくるような河口に白鳥たちが集っている。
沖の白い船は原発へのテロ攻撃を警戒する巡視船。
民家の近くにも集まっている。近くの方が餌をあげている。人家は津波で流された。
かわいいアヒルも。
お堂も流された。
母の実家があるこの集落は流された。
この橋も流された。
そして東電の事故で立ち入り禁止になった。
夕映え。
白鳥たちが静かになる。
静かになる白鳥と帰る準備をする白鳥。
内陸の大池に帰り始めた。
隊列を組み飛行の準備を整える。首を上げ下げして意識の交換をする。
バタバタバタバタバタ・・・何かの合図で一斉に飛び始める。
ここに泊まる白鳥たちは静かに時を過ごす。
2002年1月1日
新年最初の朝。
やって来た。
初日の出を待つ海の上空を飛ぶ。
釣り人。
厚い雲間からの初日の出。
白鳥が気持ち良さそうに海上を飛んでいる。
白鳥たちは今日も降下の体勢を整えた。
河口と海辺の集落に平和な景色があった。
つづき・・・ます。
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