原発避難 168 「はま&のび 2011 ①」2018/06/18 12:11


はまとのび 2011 ~猫の原発事故避難①




1 地面が滅茶苦茶揺れた次の朝はまのびや皆が急に姿を消して僕は家の中に一人残されたんだ。何日も猫顔袋のご飯を食べた。赤い魚が書いてある袋のも。或日袋が空っぽになった時車の音がしてはまのびの声が聞こえた。急いで外に出た。顔を見て僕はニャ~~ン!と大きく叫んだんだ。



2 のびのび~生きてた元気で良かった!てはまのびは言ってた多分。僕はゴロンゴロンした。安心した僕は立派な💩しちゃった。あれ緑色!鯉の餌食べたからなてはまのび喜んでた。車のエンジンの音がして僕は乗せられた。ニャーニャー泣いたよ何処に行くか不安だったから。

3 はまのびの車はどんどん家から遠ざかるみたいだった。少し開いた窓から春風が入って来てた。曲がりくねった道で左右に揺られた。暫くして車が停まった。外を見ると怖いマスクの白い服のオジサン達が道で作業をしてた。僕は気が動転して開いてる窓から外に飛び出しちゃった。

4 僕は次々起きる色んなことにビックリして気づいた時にははまのびの車の窓から飛び降りちゃってた。車は走り出してどんどん小さくなっちゃった。目の前にいる白いオジサンたちから近くの建物に逃げた。嗅いだことのある動物の糞の臭いがした。あの角のある大きな動物がいた。

5 僕は知らない家の納屋でじっとしていた。また1人になっちゃった。白いオジサン達はいなくなり夜になった。周りにいた角の動物も静かになった。人の気配はない。はまのびと離れ離れになるのかな。そう思った時僕の目の前に白い猫が2匹現れた。毛が長くてふさふさしてる。

6 僕の目の前に現れた双子の白い猫は納屋のあるこの家に住んでいるみたいだ。僕と同じようにご主人様に家に残るように言われたんだと思う。どこから来たの? 大丈夫、ここに居ても良いからねと言ってくれた。その夜は何も食べずじっとして居た。静かな夜だ。

7 暗闇が段々明るくなって朝が来た。モ~、モ~鳴き声が聞こえる。天気は良さそうだ。双子の白いふさ毛の猫がやって来た。おはよう。じっと待ってなさい、大丈夫って話しかけて来た。人の気配は本当にない。暫く時間が経った。納屋に光が入り始めた。あの声が聞こえた。

8 のびのび~の~びのびのび~と僕の名を呼ぶ声が遠くから聞こえる。少しずつその声が近づいて来た。ニャン…僕は用心して小さい声で応えた。双子の白い猫がその声に向かって走って行った。のびのび?ニャン…。のびのび?ニャン…僕は身体を起こした。目の前に白い人が現れた!

9 の~び!白い服の人は僕に向かって叫んだ。はまのびだ!でもなぜか僕はニャンと小さい声しか出なかった。双子の白い猫は良かったねと言って家の庭へ走り去った。はまのびは目の前に来てゆっくり手を伸ばして僕の身体を両手で持ち上げた。僕は身動きできないほど強く抱き締められた。

10 はまのびに強く抱きかかえられて僕は納屋の外に連れて行かれた。お日様が眩しい青空だった。見つかったの!何処にいたの?ばあばが喜んで声を上げた。のびちゃん良かったな!じいじもいた。僕ははまのびに籠に入れられて揺れる車の中、気づいたら自分家へ戻って来てた。もうビックリ、ドキドキするような事ばかりで長い間冒険をした感じだよ。家で少し休んだ後また車に乗せられて暫く時間が経った。はまのび達はずっと話してた。今度は僕は泣かなかった。安心出来たから。

11 僕は猫のびのびを車に乗せ再び自宅を離れ浜通りの南へ向かった。今度はアクシデントが起こらないように籠の中に入って貰った。途中、昨日のびのびが車から飛び出してしまい、2匹の白い猫に守られ奇跡的に救えた家の前を通過した。ありがとう君達、家族が直ぐ迎えに来てくれますように!諦めろと言われたけどそんなことは出来ないと眠れないまま郡山から長駆朝一で探しに来て本当に良かった。

12 のびのびと一緒に僕は浜通り南部の叔母の家で一晩お世話になった。両親は既に3月からひと月お世話になっていた。猫嫌い?大丈夫?のびのびを籠から出しリラックスさせた。餌を美味しそうに食べた。初めて過ごす他人の家でもおとなしくしていた。布団の上で喉をゴロゴロ鳴らすのびのび。長い一日だった。無事救い出せたことに感謝し目を閉じた。



13 昨日の湯気の上がる夕飯は忘れられない。美味しい朝食を頂いてからのびのびを籠に入れて出発した。浜通りから中通りの郡山へ行き避難所のビッグパレットを引き払いその日のうちに妹のいる横浜へ行くと決めていた。車は山間部の国道を西へ走り続けた。状況と環境の目まぐるしい変化、のびのびは籠の中で再び鳴き始めた。